【3.後遺障害慰謝料|交通事故の慰謝料】

障害を背負って生きる苦痛を償うお金

このページでは、交通事故の後遺障害慰謝料について説明します。

 

一般の人は「交通事故損害賠償=慰謝料」と思っている場合が多いですが、実は慰謝料はたくさんある費目の一部にすぎません。

 

そして、慰謝料には次の3種類があります。

 

  • 死亡慰謝料
  • 傷害慰謝料
  • 後遺障害慰謝料

 

後遺障害慰謝料は、障害を背負って残りの人生を生きる苦痛に対する償いのお金です。

 

場合によっては、被害者本人だけでなく、親族にも出ることがあります。

 

事例は主に「赤本(※)」から抜粋しているので、正確な情報が必要な場合は原本を参照してください。

 

※「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」 弁護士が賠償請求額を決める時に使うバイブル

 

後遺障害慰謝料計算の基本

下記の等級別の表が基本で、事情を加味して増減されます。

 

後遺障害慰謝料表

【後遺障害慰謝料表】

 

2つ以上の障害を負った場合は、併合により等級の繰り上げを行って計算します。

 

1級、2級等の重度後遺障害の場合には、近親者も慰謝料請求権が認められます。

 

また、14級の認定に至らず、無等級の場合でも後遺症慰謝料が認められることがあります。

 

後遺障害慰謝料(本人分)の事例
  • 第五胸椎以下完全麻痺(1級)の大学生、傷害分300万円、本人分3,000万円、父母各250万円、合計3,500万円を認めた。
  • 植物状態の単身独居者85歳女性(1級)に対し、3,000万円を認めた。
  • 左下肢喪失等で併合4級の女性生活保護受給者につき、傷害分353万円、後遺障害分1,750万円を認めた。
  • 小学3~4年生程度に知能低下した女子中学生(5級)。傷害分330万円、後遺傷害分1,750万円を認めた。
  • 鼻のゆがみ、下肢部ケロイド等で併合14級の独身女性。傷害分150万円、後遺傷害分300万円を認めた。

 

重度障害の場合の近親者の請求事例
  • 植物状態の女子小学生(1級)。当人分以外に、育てていた未婚の母に800万円を認めた。
  • 脳挫傷後の後遺障害の女子中学生(1級)。本人分以外に父母各500万円を認めた。
  • 高次脳機能障害(併合2級)の兼業主婦。本人分以外に介護の負担で収入も減った歯科医の夫に300万円、子2人に各100万円が認められた。

 

ただし、3級、4級、あるいはもっと低い7級、11級などでも認められた例があります。

 

  • 12級で示談成立していた会社員。その後、痙攣を発症し、7級に再認定。本人分以外に父母各45万円を認めた。
  • 複数の障害で併合11級の男性。本人分以外に妻に100万円を認めた。

 

等級なしで後遺症慰謝料が出た例
  • 14級に至らない頸部痛、跛行等の男性。100万円を認めた。
  • 結婚を控えた女性。耳鳴り等多彩な症状に悩まされていることで、傷害分150万円と別に慰謝料50万円を認めた。
  • 下肢醜状の小学男児。自賠責後遺障害等級上の外貌に相当しないが、軽視できない苦痛を与えうるとして100万円を認めた。

 

他の損害賠償費目を斟酌して増額した例

後遺障害逸失利益や将来の手術費などの合理的な推定が難しい時に、慰謝料の増額で対応してもらえることもあります。

 

  • 顔面醜状7級の専業主婦。この障害で家事能力が低下するとは考えられず、逸失利益は認められないが、斟酌して慰謝料を1,200万円とした。
  • 右股関節機能障害等で12級の女性。将来、人工股関節手術が必要になる可能性なども考慮し、520万円を認めた。

 

既存障害がある場合の事例

もともと障害がある人が事故で障害を負った場合、慰謝料が割り引かれたり、認められなかったりすることもあります。

 

しかし、認められた例もあるので、あきらめずに担当弁護士にがんばってもらいましょう。

 

  • 以前から歩行困難のあった85歳の男性。事故によるさらなる悪化がどの程度だったか不明確だが、杖を突くようにはなった。傷害分60万円以外に高傷害分60万円を認定。
  • 別の事故で高次脳機能障害(5級)だった男性が再び大事故に。自賠責では加重障害に至らず、等級変化なしの判断。しかし500万円の慰謝料が認められた。