特段の事情があれば、慰謝料は増額
このページでは、交通事故の慰謝料の増額事由について説明します。
一般の人は「交通事故損害賠償=慰謝料」と思っている場合が多いですが、実は慰謝料はたくさんある費目の一部にすぎません。
そして、慰謝料には次の3種類があります。
- 死亡慰謝料
- 傷害慰謝料
- 後遺障害慰謝料
慰謝料には一応の基準がありますが、特段の事情がある場合は増額されます。
事例は主に「赤本(※)」から抜粋しているので、正確な情報が必要な場合は原本を参照してください。
※「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」 弁護士が賠償請求額を決める時に使うバイブル
慰謝料増額の事由
増額事由は次の3タイプがあります。
- 加害者に故意、重過失、または著しく不誠実な態度がある場合
- 被害者の親族が精神疾患に罹患した場合
- その他
1番目の重過失とは、無免許、ひき逃げ、酒酔い、著しいスピード違反、ことさらな信号無視、薬物の影響等で正常な運転ができない場合、等です。
1.加害者に故意、重過失、または著しく不誠実な態度がある場合の例
- 加害者は酒酔いの上、高速道路を逆走して死亡事故を起こした。謝罪も不誠実。事故後に病弱な妻が自殺未遂。3,600万円を認めた。
- 加害者は無免許飲酒運転で事故後逃走を図り、2.9kmにわたって故意に引きずり、死に至らしめた。本人分3,500万円、妻子各250万円、合計4,000万円を認めた。
- 危険運転行為の結果、轢殺された19歳男性。本人分3,000万円、父母各300万円、兄150万円、合計3,750万円を認めた。
- 治療費を全額払うと言いながら打ち切ったこと、刑事裁判で有罪が確定しているのに民事裁判で否認したこと等により、後遺障害慰謝料350万円を認めた。
2.被害者の親族が精神疾患に罹患した場合
- 24歳女性の死亡事故。本人分2,000万円、父親100万円、娘を失ったショックでPTSDになった母親300万円、合計2,400万円を認めた。
- 大学生の死亡事故。母親は自殺未遂の後、精神科に入退院を繰り返し。母300万円、父150万円、合計2,650万円を認めた。
- 小4女児の死亡事故。母親は心因性うつ状態を呈し、外傷性ストレス障害と診断されて心療内科に通院。本人分2,500万円、父親300万円、母親400万円、合計3,200万円を認めた。
3.その他
- 小学生男児の死亡事故。不起訴処分となったが両親が真相究明を求めて粘り強い努力。全容が解明されたとして、本人分2,200万円、母400万円、合計2,600万円が認められた。(父は相続放棄)
- 会社員女性。追突事故の後、妊娠2週目に気づかず、レントゲン受診。中絶を余儀なくされたため、通院期間55日だが100万円を認めた。
- 加害者のタクシー会社示談担当者が勝手に被害者の会社に連絡し、さらに弁護士を立てたことも非難。受忍限度を超える不法行為があったとして20万円を認めた。